【無題】



 せいしゅんじだいについて、かぁ。
 そんなこといわれても。だって、青春、だよね? 何歳くらいだろ? 十二歳、十三歳、十四歳……あ、それとも中学生とか高校生とかかな? 大学生まではいかない? よね? 小学生もちょっと違う気がするし。うーん、そのころってなにやってたかな……いまと変わらなかった気がするなぁ……。
 ……んー。
 むー。
 …………。
 ふあぁ。
 困ったなぁ。これじゃあ記者のひと困っちゃうよね。ん? あれ? 困るのってミキじゃなくて記者のひと? それならいいかな。ダメ? じゃないよね? やっぱりダメかな? むう、そういえばけっこういろんなひとがそういうのダメっていってた気がするの。そういうことしてたらそのうちミキが困ることになるんだっけ? ……うーん、これってホントなのかな? ミキ、困ったことなんてないと思うんだけど。……しょうがないなぁ、もうちょっと考えてダメだったら諦めるからね。
 うーん。
 せいしゅんじだい。
 せいしゅんのじだい。


 青春(せいしゅん)とは、季節の「春」を示す言葉である。転じて、生涯において若く元気な時代、主に青年時代を指す言葉として用いられる。


 調べたら出てきたの。うーん、ミキってまだ若くて元気だと思うんだけどな……。
 あれ? 記者のひとが変な顔してる。どうしてかな。……あ、そういえば、こういうときにケータイいじったりするのもダメっていわれてた気がするの。でもいじっちゃったものは仕方ないよね。
 ……はぁ、困ったなぁ。せいしゅんじだいっていっても今とそんなに変わらないし、なに答えたらいいんだろ。男の子にはたくさん告白されたけど、それで誰かと付き合ったりはしてないし……告白されたのが青春っていうんじゃダメかな。でも、ミキって誰にどんなふうに告白されたっけ。思い出せないから話せない……の。はぁ。だいたいミキってホントなにやってたっけ? 中学から高校くらいだから……えっと、まだ普通に学校行ってたころだよね。たしかそのくらいにアイドルやりはじめて、アイドルだから、たしかグラビア撮ったりテレビ出たりライブしたりして、次はアイドルやめて歌手になって、自分の歌の作詞作曲やって、ドラマや映画に出たのは歌手やめたあとだったから……そうそう、お芝居もやってみて、次がたしか本を書いて……高校までならたぶんそのくらい? たしか最初の本を書いたあとに大学受験だったよね。
 なんだかなー、っておもうの。どれも、青春、ってかんじがしないよね。もっと、青春っていったら、なんだか必死にがんばったり、汗水流して努力して……とかいうのだもんね。ちがうかな? たぶんそうだよね。あとは恋とか? よくわからないけど、ミキもそういうのに興味はあるの。恋ってどんなかんじなのかな。ちょっとしてみたいかも。


「あ、あの、星井さん?」
「あ。えっと、うーん、ごめんね、なんだかよくおぼえてないの」




/とある元トップアイドルのモノローグ


 流れるように、何かに引きずられるように駆け抜けていった「青春時代」。それは、彼女の記憶にさしたる印象を結ぶことができなかったんだな。それを悲しいと思うかどうか、それは彼女自身にしかわからないことだろう。切ないような、彼女らしいような。

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 クスリとしましたw

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 美希の青春は犠牲になった、のだろうか。アイドル活動が美希の青春じゃなかったのかと思うと、とてもむなしいようなさみしいような気分になりました。こういう未来の話は青春と直結してないのに、青春という言葉を克明に残してくるのでとても印象深い作品

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 ともすれば青春というのは、まさに今その只中にいるひとには自覚のできないものなのかもしれない。だけれども傍からみたキミは疑いようもなく青春の時代に生きているとおもふのだ。

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 恋だけは、できなかったんだねぇ…

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 面白かったです。想像してなかったアプローチ方法にびっくりしました。

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 漢字の開き方が手慣れてらっしゃる。アイマスらしさの一つはメッセージウインドウにおけるひらがな率の高さと読点の多さからくる一種のもっさり感だと思っているのですが、それが嫌味にならない程度に小気味良く再現され、またそうした文体が美希らしさを表すのに一役買っていると思います。

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 なんだか美希らしいっちゃ、美希らしいスよねw

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 この美希が一体何歳なのか興味深いところです(笑) でも、なるほど美希ならいくつになってもこういう感じなのかなぁ……と思ってみたり。ある意味、生涯青春なんでしょうか。

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 青春どころか人生の大きなイベントを数多くこなしながらも、それと青春が結びつかないという、ある意味超越的な存在としての個性がとても強いですね。手の届かぬ位置にいる偶像(アイドル)として、あるいは美希の持つ非凡な才をとてもうまく書かれていますね。そして同時に、本人が自身の青春について無自覚であることが、同時に今なお青春時代が続いているということを示しているんだなあと感じました。

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 とても美希らしい作品だと感じました。青春なんてものはそれを喪失した大人が懐古するための言葉であり、美希には永遠に分からないのかもしれませんね。

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 美希らしさがよく出てると思いました。

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 「元トップアイドル」の美希が現在どのような状態にあるのかが非常に気になる作品でした。

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 青春をよく解っていない美希を通して、青春をテーマに描いているのが上手でした。恋ができなかった美希が切ない。エンドマークを目にして、改めてタイトルと本文を見返してしまいました。

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 最初、良いお話なのに無題は勿体ないなぁと思ったのですが、読み終ってみるとなるほど、無題というのが逆に面白みを出している気がします。



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