【笑顔の理由】



 二人はいつも楽しそうでいいよな。何てテレビを見て思う。
 テレビの画面の中では、最近話題フットー中だという小学生アイドルが歌ったり踊ったりしている。それを私は晩御飯のスパゲッティをフォークにくるくるまきつけながらぼんやりと見ていた。テロップには『新曲初登場3位 双海亜美』と出ている。
 みんなわかってないなぁ。あれは真美なのに。
 パッと見ではわからないけれど、細かい動作が違う。亜美のほうがダンスはちょっとだけうまくて、真美のほうが歌がちょっとだけうまい。なにより、ときどき左側の髪を気にするようなしぐさをする。真美はいつもそっち側で髪をくくっているから、落ち着かないんだろう。
 亜美と真美がアイドルをやっていると聞いたのは、学校で話しているときだった。いつもの冗談だろうと思って、うそじゃないの? って聞いたら二人がちょっと怒った。でも、全然テレビとかでないからやっぱり冗談かと思っていた。
 亜美と真美は学校でもしょっちゅう入れ替わっていた。
「どっちが亜美で」
「どっちが真美かな〜?」
「んっふっふ〜」
 そんなクイズをする。主な被害者は担任の先生、たまにクラスメイト。二人は髪の結びとか服の色とか、外見ではそれくらいしか違わないからみんな混乱した。クイズを出すときは普段どおりだったり結ぶ位置や服を入れ替えていたりした。だからみんな余計混乱した。そして相手が間違うと、
「残念でした〜」
 といって意地悪そうに笑うのだ。
 私も何度かこのクイズを出されたことがある。二人はやっぱり笑いながら出題する。他の人にクイズをするときとは、ちょっとだけ笑い方が違うように見えた。私たちは同じ学校に通っていて、同じマンションに住んでいて、ほぼ毎日会っていたんだ。間違うはずがない。私があっさり正解をすると、
「なっちゃんはカンタンに当てるからつまんないー」
 といって口をとがらせる。
 だったらどうして何度もクイズを出したんだろう? どうして当てられてつまんないクイズをニコニコ笑いながらしてきたんだろう?

 スパゲッティを食べ終わって自分の部屋へ行く。亜美と真美がテレビとかによく出るようになる前に、私は転校した。お別れのとき、二人とも泣きながら、無理やり笑顔を作ってた。今、テレビの中の双海亜美は笑っている。私にクイズを出すときと同じような笑顔。入れ替わって大人をからかうのが楽しいのか、それとも別の理由があるのか、よくわからないけど、とても楽しそうだ。
 私はボールペンを取り出す。リレキショの書き方なんてわからないけど、書かなきゃ始まらない。二人はまたいつか会おうと言ってた。ならこちらから会いに行こう。二人があんなに笑顔なら、アイドルはとても楽しいに違いない。
 リレキショを書きながら、明日からサインの練習をしなきゃいけないなと思った。


 周囲を翻弄しながら、自分たちに関わるすべてを「遊び場」に変えてしまう、そんな二人に出会った少女の、新たな決意。がんばれ、きっと亜美も真美も応援してくれる。ライバルとして、そして、友達として。羨望するだけの世界から、もうすぐ現実になる君へ。Good luck to you!!

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 亜美真美の小さな願いが文章から綺麗に伝わってきました。胸の奥がじんわりとしました。

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 面白い!あともうちょっと自由に文字数があればもっともっと広がったかもですね

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 ラスト、履歴書よりもファンレターという名のお手紙だった方が好みだなぁ、と思ったのですが、そんな些細なことはさておき、綺麗にまとまったいい掌編でした。

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 素敵な話だ。こんな理由もあっていい。

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 はたして数年後に再会するであろうあの双子がはたして昔のままでいるかな。いないだろう。ちょーパワーアップしてやがるぜ、あいつら!

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 登場人物のチョイスが、とても好みでした。なっちゃん、いいですよね! 亜美と真美の差異についても、説得力をもって表されていたと思います。

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 気に入った、うちにきて律子のお下げをフライにしていい

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 面白かったです。上手く描写されたあみまみらしさもさることながら、なにより、同級生が同性であることがよかったです。同級生もののパターンとして、男性の同級生が同じ教室にいて<近くて、けれど遠い>アイドルたちに憧れる、というのは散見されるパターンで(もちろん一定の面白さもあるのですが)ある種のノスタルジーであったり、前向きな失恋のようなクリシェに物語が収束してしまって物足りなさを覚えたりもするんですが、この作品は同級生が同性であることで<けれど遠い>というところを軽やかに――それこそ亜美と真美の勢いにあやかるように――飛び越えていて、とても素晴らしいと思います。リレキショって片仮名で書いているところも、飛び込む決意をした世界への、当然不慣れな感じが徹底されていていいと思います。アイドルになるよ、私も!って決意するこの速度感、疾走感はとても鮮やかな青色をしていました。面白かったです!  ――ここまで書いてなんですが、実は語り手は女の子っぽい男の子でした、ということだったら赤面しますが、どちらにしろ素晴らしさは変わらないですね。

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 お茶の間が見えました。

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 亜美たちがなっちゃんに声を届けようとするだけでなく、なっちゃんも亜美たちに会いに行こうとするというその姿はいいですね。いつか彼女たちがステージで共演する日が来たらいいなと、そう思えます

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 青春、と言う言葉自体にノスタルジックな含意があるのに反して、幼年期の終わり、青春時代の始まりを瑞々しく描く発想には意表を突かれました。

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 一つの青春、その始まりをうまく描いていたなあと感じました。なっちゃんの進む道に、明るい陽がさせばいいなと思います。

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 二人の笑顔には人を前向きにする力があるんだと思います。頑張れなっちゃん。

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 始まりの始まり、みたいな。 今じゃなくて、思い出と未来が強いのも青春なのかなぁ。

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 亜美真美がなっちゃんにクイズを出す気持ちが実によくわかる作品です。そして、テレビの中の亜美が見せる笑顔。それはおそらく、自分を知ってくれる人間が近くにいることによる笑顔なのでしょう。なっちゃんのお話をもっと読みたくなる、そんな作品でした。

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 なっちゃんの転校コミュがこう来たかーと膝を打ちました。夢を目指して頑張るなっちゃんが眩しい。青春ですね

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 第三者視点からアイドルを描きつつ、それが同時に語り手(の青春)を描くことにもなっていて、面白いですね



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