【5年後の仲間たち】



ここは、都内にある居酒屋たるき亭。
日々の戦に疲れた者が辿り着く小さなオアシスである。
そして今日もまた女性が一人……。

「ぷはー、美味しいー! 今日も頑張ったわー!!」
そう言ってビールのジョッキを飲み干した。
彼女の名前は音無小鳥。3年前まで765プロの事務員をしていたが、今では立派な社長秘書にまでなった。
とはいえ、やっていることは当時と変わりないわけなのだが。
「そう言えば、あの頃はみんな元気に活動していたわね」
小鳥はたるき亭の壁に飾られている写真を見て目を細めた。それは初代765プロメンバーの全員写真だった。
「懐かしいなー。今頃どうしているかなー」
「あの〜、もしかして小鳥さんですか〜?」
「ピヨっ!?」
後ろから声を掛けられて驚く小鳥。振り返ると長い髪に大きな胸、そしておっとりした口調に覚えがあった。
「もしかして、あずささん?」
「はい〜、お久しぶりです〜」
その声の主はトップアイドルを極めた後、時の担当プロデューサーと結婚して引退した、三浦あずさであった。
「急にどうしたんですか?」
「お買いものに出たつもりだったんですが、いつの間にかここまで来てしまいまして〜」
「方向音痴は相変わらずのようですね……」
変わらないあずさに、小鳥は苦笑する。
「それに今日、あの人は帰りが遅いみたいなので、ちょっと飲んで行こうと思いまして〜」
「そ、それならお隣どうぞ。再会の記念に一杯やりましょう!」

小鳥の一言で始まった、あずさとの思い出語り。
初代765プロのメンバーは皆、事務所を離れて違う世界で輝いていた。

春香はパティシエに、千早は世界を巡る歌手に、律子は敏腕プロデューサーに、
真はスポーツタレントに、美希はグラビアアイドルにそれぞれなっていた。
やよいは保育士を、亜美と真美は大学合格を、伊織は水瀬財閥次期当主を目指している。
雪歩は家業を継ぎ、響は沖縄民謡の歌い手になり、貴音は全国を旅しているという。

時間も経ち、両者いい感じになった頃、あずさがこうつぶやいた。
「あの頃はみんな頑張って輝こうとしていました〜。でも今はどうでしょうか〜?」
あずさのその言い方に、小鳥は少し違和感を覚える。
「お言葉ですが、その言い方はちょっと……」
小鳥の言わんとした事を察してか、あずさはそっと首を振った。
「もちろん今も輝いているわ〜。当時とは違う輝きを求めてね。人間は輝きを忘れたら老いるそうよ。だから輝いている間は青春なのかしらね?」
「あずささん……」
「私はもう現場を退いた身ですから偉そうなことは言えませんが、今も輝かせてもらっています。あの人のおかげで♪」
未だ独身の小鳥のとって、最後の一言は効いたみたいだった。
「えーい、こうなったら飲んでやるー!!」
「あらあら、うふふ」

女二人の夜はまだまだ続きそうである。


(終わり)


 小鳥さんはどうしてもこういう役回りが似合ってしまうから、困り物ですねw 運命の人と巡り会えたあずささんを筆頭に、それぞれが自分の思う道を見付けて、ステージとはまた違ったスポットライトを浴びているであろう彼女たちに幸多かれと思う気持ちは、小鳥さんもあずささんもきっと同じ。違うのは……うん、小鳥さん、今日くらいはいっちゃってください(涙

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 小鳥さん……;; い、いや、でも売れっ子事務所の社長秘書もきっと「輝く」仕事ですよね! ええ。あ、ちゃんと仕事してください。

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 萩原家の稼業は2でしか明示されていないだけに、無印準拠ではこういう表現になるのか、と改めてアイマスというコンテンツの幅を再確認させられました。その意味では、青春m@ster2という企画だからこそ、この作品の響と貴音の扱い(こうなるならば、確かにSPでも2でもなく無印準拠たるべきです)に一味、面白味が増しているように感じます。一つだけ苦言を呈させていただくなら、あずささんの台詞は、作者の主張とキャラクターの性格との擦り合わせをもう少しした方がいいのではないか、と思いました。

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 765プロのその後を描かれた作品と思いますが、アイドルたちがそれぞれ「らしいなぁ」と思わせる進路をとっている反面で、小鳥さんだけは当時と変わらない、というところに面白みを感じました。青春時代のありし日を語る二人の大人の女、と思わせつつ、その一人である小鳥さんが実は青春の象徴として変わらぬままにあり続ける、と思うと非常に興味深い構図でした。

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 既にアイドルをしていない子たちが大勢いるというのが面白い世界線ですね。何となくですが、SS畑ではなく動画畑の人が書いた作品であるように感じました。それとこれカテゴリ的には2なのでは・・・?w

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 誤字があるのが惜しい……

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 永遠に青春を謳歌できる存在、それが小鳥さんなのだ

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 ダイヤモンドは永遠の輝き、というCMが昔ありました。小鳥さんもきっと大丈夫。



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