【あるアイドルの青春模索】



青春:(1)若く元気な時代。人生の春にたとえられる時期。青年時代。
    (2)春。陽春。

webに載っていた青春の意味はそんな感じだった。何というか、この単語を検索して意味を調べるのもルール違反な気がしてきた。
どうして私はこんなことを調べているのか。それは真美の言葉が発端だった。
「いやあ、みきみきはまたプロデューサーといちゃらぶしてるねぇん!青春だー!」
そんな風に騒ぎ立てていたのだ。その時美希を見たら、確かに幸せそうに二人で話していたのを覚えている。それをふと思い出して今に至るわけだ。
しかし改めて意味を知ってみると私の認識している青春とは少し違っていた。
てっきり青春というのは学生だけが謳歌できるものかと思っていたが、その限りではないようだ。
私だってまだ二十歳未満なのだから若く元気な時代のはずだ。当然、これから人生の春にたとえられる時期も到来する、はずだ。
もっと具体的に言うのなら私の考えていた青春は、男と女が寄り添いながらご飯を食べたり、ちょっとのことで喧嘩してもすぐ仲直りして抱き合ったり。
なんだかそんな甘酸っぱいものだと思っていたのだが、自分で思い返してみると恥ずかしくなってきたのと、昔そんな私の一面を本屋で見られたのを思い出して更に恥ずかしくなってきた。穴があったら入りたい。
でも私の考える青春はそんな感じで、この年になってもまだ少女趣味が抜けきれいないのはいかがなものなのか本気で悩ましくなってきた。
他のアイドル達も美希と同じくらいに担当プロデューサーと仲が良かったりするのだろうか。春香や真、やよいあたりは仲良くしていそうだが、千早や貴音はいまいちピンとこない。
あの二人も私の知らない青春をしているのだろうか?
果たして、私の青春さんはいつきてくれるの

「おーい律子、一緒にご飯食べようぜ」

「…はいはい、考え事が終わったら食べましょう」

「考え事?」

「はい、プロデューサーは青春ってしましたか?」

「うん」

「そ、それはいつ?」

「今だけど」

「…その年でですか?」

「まだ若いっちゅうねん、それに青春は若くなきゃ出来ないってものじゃない。俺にとってはアイドルをプロデュース出来て、律子と一緒に飯も食える今が最高に青春って感じるよ」

…なるほど、これは一杯喰わされたな。ということはもしかして私も今

「いいから食べに行くぞ!」

「ちょ、ちょっと手を引っ張らないでください!」

「聞こえない聞こえない、あと今日は久々にアイドルやるんだろ? 衣装合わせもやるぞ!」

「わかりましたわかりましたから手を離してください、めちゃくちゃ恥ずかしいですから!」

「飯だ飯ー!」

「ちょっとー!」

そうして始まる一日に、私は恥ずかしながらも思った。
私も今、この人と青春を謳歌しているのかもしれない、と。

青春:(1)若く元気な時代。人生の春にたとえられる時期。青年時代。
    (2)春。陽春。

使用例:青春m@ster 終


 今まさにきみは青い果実を実らせたばかりだと思うよ、りっちゃん。

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 作者予想:微熱さん

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 これが若さか…。

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 理論的に馬鹿なことを考えているのが実に律子らしくて面白かったです。時にこのPは誰をプロデュースしているのでしょうね。気になります。

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 句読点抜きで直接話法の台詞部分に入るというのは、唐突さを強調する手法としてアリだと思うのですが、この長さのものでは、繰り返しには向かない手法ではないかな、と思いました。

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 最初に青春の意味の検索から始まり、思い悩むモノローグが続いていくところにとても律子らしさを感じました。そして思考に深く沈んでいく律子をひょいと引っ張りあげてやるプロデューサー。この二人はいつまでたってもこんな感じで、いつまで経ってもどこかにこんな青臭さを残したままで芸能界の荒波を老獪に生き抜いていくのかなぁなんてことを思いました。とても雰囲気のいい作品でした。

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 青春とはなんぞや、というアイドルの視点では先の作品と被るのですが、こちらは律子の味が出ていて面白かったです。

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 一人称地の文から台詞につなげるのが、おっ、と思いました。その流れがよかっただけに、会話パートの改行挿入は流れが滞るかな……。律子とPの流れるような会話が良かったので、行間無しの方が一層好みかなと思いました。

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 なんだかんだで丸めこまれる律子がかわいい

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 表に出さないけど実は夢見る乙女、なりっちゃんの一面がチラリと見えるようなところが微笑ましくて良いですね



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