【理由】
「やよいちゃんはいつも偉いねぇ」
お仕事の帰りなどに、近所のおばさんに会ったりするとたまに言われる言葉。今日もそんな言葉をかけられた。
それを言われるたびに、少しだけ申し訳ない気持ちになる。
「そんなことないですよー」
気持ちを隠しつつ笑顔で答えるが、それは本心で。
「いやいや、こうやって毎週きちんとお仕事をして、それでもらったお金はほぼ全額お家へと渡しているんでしょう。家の娘の方が年上だっていうのに、見習って欲しいわね全く」
けど、周りの人はいつだってそう言う。
「娘もバイトだけど働いていてね、でも家にお金を渡すなんてことは一切してこなくて服を買ったり遊びに行ったりすることばっかに使ってるのよ。働いてもらったお金だしそれが悪いとは言わないけど、やよいちゃんみたいな子が偉いのは確かよ」
「いえいえ、そんなことないです。――そろそろお夕飯を作らなきゃいけないので失礼しますねー」
これ以上話を続けられるのが耐えきれなくて、そう誤魔化してその場から抜け出す。
後ろから、あらごめんなさい頑張ってねという声が聞こえてさらに申し訳ない気持ちになってしまう。
だが、本当にそんなことはないのだ。
始まりは確かに家計の足しになればと思ったことが理由だった。
でも、もうそれだけが理由じゃない。それが一番の理由ではなくなってしまった。
アイドルを続けたい。トップアイドルを目指したい。
そんな、だた一つの成し遂げたい目標のためにひたすら頑張る。今の自分はそれをやっているだけ。
765プロのみんなと楽しく色々なことが出来るのも、伊織ちゃんたち竜宮小町と競い合ったりするのも、今しか出来ないことな気がするから。
あのおばさんの娘さんだってきっとそう思ってお金を使っているのだろう。自分の場合はたまたまそれがお金を使わないで済み、それだけでなくもらえるようなことだったというだけなのだ。
だから、偉いなんて言われると申し訳なく思ってしまう。
自分は偉くなんてない。
ただ、楽しいと思うことを続けるために、好きな居場所に居続けられるように頑張っているだけだ。
けど、そんなことをわざわざ言うのもなんだか憚られて。
「……ごめんなさい」
振り向き、一度だけもう見えない姿に向かって頭を下げる。
「よしっ」
直接どうこう出来ない以上、悩んでも仕方がない。
頭を上げると同時に来週も頑張らないとという思考に頭を切り替え、少しばかり急ぎつつ家の方へと駆けだした。
-終-
ぃぃゃょぃ
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なんとなくはじめたことが、必要に駆られたから手をつけたものが、いつのまにかほんとうのほんとうにたいせつになっていて。でも、そんな青春のはじまりだって、すごく素敵で、とうといものだ。
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やよいはいい子だなぁ。
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家庭のためじゃなく、自分の為にアイドルをやると決めたやよいが、この後どう輝いていくのか。頑張ってほしいものです
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青春が終わってしまった人間と青春まっただ中の人間との対比ですね。考え方や行動にとってもやよいらしさが出ていて思わず頭をなでなでしたくなってしまいます(ただしロリコンでない)。
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一人称で書いた意図がわかりませんでした。語りにやよいらしさを滲ませないのであれば、登場人物の内心を見通す語り手による三人称で十分だったのではないでしょうか。
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やよいの世界は暖かなものに囲まれていて、やよいは偉くて、賢くて、かわいい。そんな印象を崩さずやよいを悩ませているのがとてもいいなぁと感じました。子どもでお姉さんのやよいらしい悩み方。大人はいつだって子どもに文句ばっかりだけど、実は子どもが楽しんでいることはとても嬉しい。近所のおばさんはもしかしたら、やよいのことを心配していて、でもそんなことは言えないから褒めているのかもしれませんね。そのことにやよいが気づくのはまだまだ先、大人になってからの話、という感じでしょうか。
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やよいはいい子だなあ
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いろいろ我慢することもあるけど、それを表に出さないのがやよいなのかなと思います。やよいは良い子だなぁ。
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「今しか出来ないこと」という一文が重いですね。ほかの誰かにとっては遊ぶこと、やよいにとってはアイドルを頑張ること。青春という括りではありませんが、やるべきことをきちんと捉えている子だなと感じました。ちょっと思考が大人び過ぎているところもあるけど、このやよいは好感を持ちます
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もしもやよいが貧乏じゃなかったら……と、ふと思ってしまった
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ヤヨイハイイコダナー(´;ω;`)
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