【ハイスクールライフ】



「うー、いい加減嫌になってきたぞー!」
 ポニーテールの少女が大声を出し、腕を大きく伸ばす。
 少女には目の前に広がるノートと現実が際限なくあるようにさえ思えた。
「我那覇さん、まだ律子がいなくなって10分程度しか経ってないのにもう音を上げるの?」
 『我那覇さん』と呼ばれた少女に呆れたように長髪の少女が反応する。
 少女にとって、この手のものは早々に終わらせるものであったため、ここまで悩んでいる姿が理解できない、という様子だった。
「そ、そうだ! ずっと頑張ってたから響ちゃんも千早ちゃんも疲れてない? 私、昨日焼いたクッキー持ってきたんだ!」
「私は疲れていないわ。 それに、春香の方もさっきからあまり進んでいないようだけど?」
「うっ……」
 『千早ちゃん』と呼ばれた少女の言葉に『春香』と呼ばれた少女は言葉を詰まらせた。
 隣に置いてあるホワイトボードに張られている写真の元気は少しも見えない。
「いいじゃんか! 自分たちは千早と違って今日一日ずーーっと勉強してたんだぞ!」
「私だって新曲について勉強していたし、我那覇さんたちのそれは自業自得でしょ?」
「とーにーかーく! 少しくらい休まないと自分たちもうおかしくなっちゃいそうなの!」
 響の剣幕にこれ以上追い込むのはかえって逆効果だと思ったのか、軽くため息をついて
「……あんまり休みすぎてさらに大変になっても知らないからね」
 その言葉に二人は思わず席を立ち抱きしめ合うほど喜んだ。
 そんな二人を見て、少女は仕方ないと思いながらも少しだけ嬉しそうだった。




「さすが、春香の焼いたクッキーはおいしいな!」
「本当、春香の作るお菓子はどれもカロリーメイトよりずっと美味しいわ」
「えへへー、お粗末さまです!」
 『春香』は二人の賛辞に満面の笑みを浮かべた。
 さっきまでの嫌な気持ちはすっかり飛んでいるようである。
「……あのさ、千早」
「何?」
「そ、その……勉強を教えてもらいたいんだけど……」
「何を言ってるの?」
「そ、そりゃ千早には関係ないかもしれないけど」
「そうじゃなくて、質問されたらちゃんと教えるわよ? もちろん、答えをそのままってわけにはいかないけど」
「えっ、本当に!?」
 『千早』の言葉に質問をしていない『春香』まで驚いた。
「何で二人とも驚いてるの? だったら、私は何のためにいると思ったの?」
「えっと……私たちがサボらないようにいるのかなーって」
「それもないとは言わないけど……私がここでこうしてるのは私が力になれるならなりたいって思ったからよ」
 二人は一瞬、普段では聞けないような台詞に一瞬呆けたが、すぐに笑顔になり――


 1年と5か月後、この3人がトップアイドルとして全世界を股に掛けるアイドルになるのだが、それはまた別のお話。



 すごく「らしい」感じ。 特に千早がすごく千早してる。

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 珍しい組み合わせのような。響と春香さんの、違う元気にあてられた千早ちゃん可愛かったです

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 「デビュー」から「プロデューサーに会う」までの間は、こう、夢が広がりますよね

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 千早、カロリーメイトの味について考えることがあったのか!w

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 アイドルといっても、まだ彼女らも学生。そういう一シーン、いいですね。そんな日常があるからこそ、アイドルとして輝けるのかも

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 はるちはひびは何となく珍しいトリオのような気がしますね。千早の不器用な優しさが垣間見える作品でした。余談ですが、カロリーメイトはアニメ版準拠ですね。

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 千早が勉強を教えてくれるとは思わなかった春香と響。千早が変わったのか、春香と響が一つ千早のことを知ったのか、それとも両方なのか。春香、響、千早という人選がなんだかいい味を出しているなと思いました。お互いに距離感を測りかねていて、それでも少しずつ、一歩ずつ。何でもない日常かもしれないものが、最後の一文でぱっと未来へ向かう話になっているのがとても印象的でした。こうやってじわじわと撚り合わせて重ねあわせて、トップアイドルへの道を三人で登っていくのだなと、そんなことを感じさせられます。

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 仲良し同級生トリオが良い感じでした。ただ、「それはまた別の話。」という締めに、どうしてもオチ丸投げというか打ち切り臭を感じてしまって少し残念……

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 学生感というか、年相応のキャラクターらしさが良く出ていると思いました。実際に言いそうなやり取りに微笑ましくなります

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 ありそうでなかった組み合わせが新鮮でした。(いい意味で)お馬鹿キャラの響がかわいい。

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 同学年の組み合わせは良いものだ



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