【輝く青春 輝かせる青春】



「プロデューサー、行ってくるぞ!」「行ってきます!」「行ってきますぅ〜」
「おう、行ってこい!」

ユニットの3人を送り出す。
最初のうちはギスギスしたりテンションが上がらなかったりで散々だったが、
最近はかなりチームワークが出てきたんじゃないか、と密かに自負していたりする。

彼女たちの迷いのない目の澄み切った笑顔は、
見ているこちらも気分が清々しくなる。

青春だな、と思う。
オレはこれからも彼女達の今と未来を、
プロデュース活動を通じて守り、より高みへと導いていくつもりだ。

だが、ときどき、ふと思う。
オレが彼女たちくらいの歳だったとき、こんなに充実してたかと。
普通に高校に通って、授業受けて部活に通って、
といった日々に終始していたような気がする。
文系、理系にこそ分かれてたけど、
まだ大学志望などは特に決めてない中途半端な時期――

「なーにショボくれた顔してんのよ」
「伊織……」

今日はいつもの3人に竜宮小町の2人を加えたクインテッドライブだ。
今回は伊織と亜美に参加してもらっている。

「何よ。また響と真が喧嘩してんの?」
「いや、ユニットのみんなは心配ない。……ちょっと黄昏てただけだ」
「そう。プロデューサーが浮かない顔してたら、響たちだって弾けられないじゃない」
「ふと、オレが彼女たちの歳のとき、こんなにキラキラと輝いてたかな、ってな」

へぇ〜。
伊織がいたずらっ子のような顔つきをする。

「アンタ、つまんないこと考えてんのね」
「何もそこまで言わなくてもいいじゃないか……」
「私たちアイドルはみんなの前で自分を輝かせるのが仕事。
   プロデューサーであるアンタは私たちを輝かせるのが仕事。
 そうでしょ?」
「ああ」
「じゃあその時、私たちが輝いているとき、
 アンタは輝いてないわけ? 充実してないわけ?」

アイドルたちを輝かせる。輝かせたい。
それがオレたちプロデューサーの仕事。そして願い――

「――そんなことは、ない」
「そう。じゃあ、もっとシャキッとしなさい」
「おう!」
「私たちをこうして呼べる程度まではちゃんとやれてるんでしょ。にひひっ」

律子には内緒だからな、と続けようとしたとき、
響たちのステージが終了し、休憩のアナウンスと共に
裏方へ戻ってきた。

「プロデューサー、ただいま! 自分たち、最高の出来だったぞ!」
「いい感じに盛り上がってきましたよ! このまま行っちゃえそう!」
「プロデューサー、今日は気持ちよく歌えました。えへへ」

そう。オレは自信を持って彼女たちを迎えていい。

「ご苦労さま! 一息入れてくれ。後半は5人で突っ走るぞ!」
「「「はい!」」」


おわり


 タイトル好き

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 伊織の台詞のうちのいくつかは実は亜美が物真似で喋っているのだと脳内補完しました。

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 いおりんの激励マジ最高! また彼女たちをプロデュースしたくなる、そんな爽やかな作品でした。

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 こういうお話を読むと、ふと自分の「青春時代」に想いが飛んで切なくなったり……。彼女らには、いつまでも輝いて欲しいものです

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 輝く青春を見ていると、平凡な大人は喪失感に襲われてしまう。それはきっと青春とはそういう大人が形作っていった言葉だからなのかな、と思いました。大人を驚かせ、羨ましく思わせるのは青春時代の子どもたち。そして時に鋭く、大人を驚かせるような大人びた顔を見せるのも青春時代の男女たち。そういう境界線上の少女として伊織はとてもはまり役だなと感じました。もっと輝かせてよ、という子どもの顔と互いに支え合うような大人同士の顔が両方見え隠れしてすごく魅力的だなと感じました。

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 伊織きたーーーーーーー

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 良かった。ゲームやりたくなりました

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 Pや小鳥さんにはアイドルたちを見守る視点の話が似合いますね。想いを馳せるのもまた青春の一つなのでしょう



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