【縁日、祭事あり】



 私の青春は、こういった、肩から重たい空気を着ることだろうか。

 本日五回目の没の烙印を押しやって、私は徒然と立ちぼうけ。
 わざわざ誘われたからこうして待っているというのに、連れ添い人は残業といって仕事を取った。ひどすぎる。


 縁日、祭事あり。
 屋台が所狭しと立ち並び、人波であふれかえっている細道。肩を寄せ合う男女と子供の群れが、賑わいを引っ張っていた。
 走っている子供たちとぶつかって落とさないよう、巾着の緒にきゅっと力をこめ、カランコロン。移動する。
 浅くかき上げた髪に桔梗のヘアピン。浴衣はまあ、気合い入れ過ぎとはいわないだろうが変装のつもりだ。
 コンタクトにしたからか、みんながみんな私を秋月律子だとわからないまま通り過ぎている。だからかもしれない、なにかやりきれないものがお腹に沈む。
 目の前にちょっとは有名になったと思うあのアイドルがいるっていうのに、誰も私と気づかないなんて。もうすこし「うわー秋月律子だ」とか、「なんでアイドルがここにいるの?」とかあっていいんじゃないか。
 そういうリアクションがない代わりにやってくるのは、軽薄で軟派でチャラい男ばかり。

「ねえねえ、一人で何してるの? よかったら一緒に――」

 あと何回、私は彼らの見えないおでこに烙印を押すんだろう。
 単純じゃないんだ。女の子の、とくに私のことは。
 ふと、同年代くらいのカップルが綿あめを食べあっている姿を見て、すこし固まってしまう。
 すぐに目を逸らして、息を落とす。私は今なにを考えていたんだろう。呆れ? それとも、嫉妬?
 どちらともつかない気持ちを胸の内に黒く固まらせ、ため息に紛れ込ませる。
 きっと私には得られないものだと、おまけつきで。

「おーおー。今日もバッチリ決めてるなあうちのアイドルは」

 おちょくってるのかと後ろを振り返ると、薄汚れたスーツ姿で色気もなにもない、仕事帰りの男がいた。
 お祭りでは場違いにもほどがある、その、あんまりな服装はいかがなものか。まるでダメな相手だということは、私が保証してもいい。
 だけど、いつも周りにアイドルがいると、好きなタバコを吸おうとしない。気難しくてわかりづらい人。
 待たせておいてその言いぐさはどうなんだ。問い詰めたいところを「まあまあ先生、グッと抑えて」といい聞かせ、私は彼に向き直る。

「よく、私とわかりましたね」

 そりゃあね、と走ってきたことバレバレの息遣いとやせ我慢で、
 
「担当アイドルの顔を間違えるなんて、ありえないだろ」

 と、平気でそんな茶化した言葉をふっかけてきた。
 小さく息を零して彼から離れだす。すまんすまんと謝りながら来る彼。
 綿あめを条件に遅れてきたことを許そうかしら。
 浮き出そうになった顔を隠すように、前を向く。気付かれてないとは思うけど。
 どうすれば後ろ姿で、難しい顔とわかるんだか。
 もらったヘアピンがしゃらり、かわいい色を奏でる。
 単純じゃないんだ。女の子の、とくに、私のことは。

(了)


 いい。律子はこうであって欲しいと思う。でもこれ1準拠じゃないかとは思った

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 うおおおおおおおりっちゃーーーーーーーーーーん

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 りっちゃんかわいいーーーーーーーーーーーー

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 りっちゃん可愛い。かーわーいーいー。そばに寄り添うような少女の描写。これこそ一人称の強みですね。りっちゃん可愛い。文字数に合わせようとしたのか、あちこちにつぎはぎの後が見て取れるのが残念です。あと、ただの僕の趣味かもしれませんが、もうちょっとだけ丁寧に言葉を選んだ方が良いと思います。

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 単純じゃない乙女なんだから、呆れたり嫉妬を感じてもいいと思うんです。律子は女の子です! ところで、これはアイマス2準拠なんでしょうか……?

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 律子の揺れる乙女心が青春ですねえ。浴衣姿を見てみたいものです。ところでこれは無印の世界線ではないのでしょうか。

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 アイマス2というよりむしろ、アイモバ時空なのでしょうかね。

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 遅れてきた王子様はわたあめを条件にエスコートを許されたようです、なんてところでしょうか。単純じゃないお姫様だからこその魅力に溢れている律子でした。恋を夢見るお姫様は、シンデレラの魔法がかかっていなくても見つけてくれる王子様じゃなきゃ踊ってはくれない。白馬に乗ってなくても、マントのついた服を着てなくても、誰より大事な王子様の条件をクリアしているプロデューサーがいい味を出しているなと感じました。

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 りっちゃんは意地っ張りですね。可愛いです

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 乙女心は複雑。夏祭りで普段と違う様相のりっちゃんが新鮮でした。この律子とPの関係は、2よりも無印のほうがしっくりくるような気もしますが…

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 絵になる律子像ですね



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