【闘いは青春にあり】



 竜宮小町はジュピターに敗北、ジュピターは千早・真・雪歩の三人に敗北した。
 だから、竜宮小町は、負け犬。
 ……冗談じゃないわ。スーパーアイドル水瀬伊織ちゃんがそれで終わるわけないじゃない。とっとと態勢を立て直して、アイドルの頂点に立ってやるわ。
 でも、そう誓いはしても、焦燥感は私を弱くする。
 今日も私は事務所のソファに座って、暗い面持ちで、ただ考える。どうすれば勝てるのか、どうすれば前へ進めるのか。律子だけに頼ってる場合なんかじゃない。
 ――考えが煮詰まってふと顔を上げると、事務所の入り口に雪歩が立っていた。さっきまでこの事務所は私一人だったはずなのに。
「雪歩。あんた、そんな所で何突っ立ってんの。さっさとソファにでも座ったらどう?」
 ついつい雪歩に対する口調も刺々しい物になってしまう。自分が嫌になる。
「……う、ん」
 はっきりしない返事。
「雪歩、いつにも増して元気ないじゃない。IA大賞も取って、万事快調なはずじゃないの?」
 雪歩は私の言葉にしばらく逡巡して、
「じ、実は……わ、私、学校で、その……いじめ、られてて」
「はぁっ!? いじめっ!?」
 アイドルがいじめられる理屈はわかるけど、IA大賞取ったようなアイドルでも、そんな事あるわけ?
「雪歩。真と千早には言ったの? それ」
「ふ、二人に言うと、迷惑になるから……」
 二人へ負担はかけれらないってわけね。ふぅん。
「じゃ、どうするのよ? 私がいじめてる連中に圧力でもかければ良いわけ?」
 雪歩一人じゃいじめに対抗できるわけない。私も仲間を守るためならいくらだって力を使ってやるわ。
「ううん、それは良い」
 ぁあ、汚い手は使いたくないってわけ。そりゃそうね。アイドルなんだし。
「それなら、私があんたの学校に付き添って行く? 仲間は多い方が良いでしょ」
「それも、良い」
「何よ、結局どうして欲しいの?」
 雪歩はしばし俯き、そして、顔を上げた。

「伊織ちゃんは、何もしなくて良いよ。私が、一人で何とかする」

「な……っ」
 なんで?
 そんな疑問が口から漏れ出そうになった。
 雪歩は、いじめに立ち向かう勇気なんか持ってないと思ってた。私に相談して、助けを求めてるんだと思ってた。少なくとも一年前の雪歩ならそうしてた。
 ……なのに、そんな雪歩が、一人で何とかする?
 私は呆然と、仕事のために事務所を出て行く雪歩を見送った。



 数日後、出会い頭に雪歩が私へこう告げた。
「伊織ちゃん。心配しなくて良いからね」
 破顔する雪歩を見て、すでに全てが解決している事を悟った。
 ――雪歩は、闘っていた。
 たった一人で、いじめなんて凶悪な物を相手取り、勝利をもぎ取ったんだわ。
 その事実に気付いた私は、ようやく自分に足りなかった物を知った。
 瞬間、私は覚悟する。
 竜宮小町でIAを制覇する覚悟。
 そして、雪歩を超えるスーパーアイドルになる、覚悟を。

 きっと私は成し遂げられる。

 だって、伊織ちゃんはこの世の誰よりも可愛いんだから。にひひっ。



 伊織ー!俺だー!一緒に青春してくれー!結婚でもいいー!むしろ作者でもいいー!

----

 もう少し読んでみたかったです。雪歩がどう解決したのかなと。伊織はどう気付いたのかなと。

----

 本当はとても芯の強い雪歩。そして同じように強い伊織。こうして、彼女は「七彩ボタン」を手に入れたのかもしれませんね。

----

 願わくば、その1年後に伊織が闘いに勝利していますように

----

 「にひひの後には♪をつけろデコ助野郎!」とアニマスの監督インタビューで見た気がするのですが、記憶がはっきりしませんし、何よりデコという単語に過剰反応したいおりんが大股でこっちに向かって歩いてきてああっありがとうございます!(蹴られた)

----

 面倒見のいい伊織と、スイッチが入らないと気弱な雪歩が微妙に発生していた力関係を超越して対等になる話、でしょうか。つい伊織に頼ろうとしてしまった雪歩の逡巡のようなものが背景、行間に薄っすらと。比較的クレバーに、仲間は仲間だけど勝負は勝負、と割り切れるキャラクターであることが多い伊織が「勝負」から逃げていた、というような話はなんとなく珍しいように思います。

----

 いおりんの奮起マジ最高!!

----

 雪歩も伊織もかっこいい。具体的なエピソードをもう少し読みたくなりました。

----

 どん底から這い上がるのが素敵なアイドル、というのもそうそう居ないんじゃなかろうか。

----

 凛としたいおりんが良かった。雪歩の話をもうちょっと見てみたい気もしました



前の作品  << もどる >>  次の作品

inserted by FC2 system